バンコクの渋滞を疾走するバイクタクシーで命懸けのスリルを味わう

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渋滞でノロノロ運転を続ける車列を尻目に、横から一気にごぼう抜きすることができる渋滞しらずの乗り物、それはバイタク(バイクタクシー)です。

地元民が利用するその姿からは、風を受ける爽快感が堪らないようにも見えますが、無防備であるため、ひとたび間違えば大惨事となってしまうというハイリスク・ハイリターンな乗り物でもあります。

旅行者には相当に難易度の高いバイタクですが、上手に活用すれば行動範囲が広がり、時間の短縮にも一役買ってくれます。

そこで今回は、私が実際にバイタクに乗車してみての感想や利用方法をご紹介いたします。

バンコクの渋滞を疾走するバイクタクシーで命懸けのスリルを味わう

道を歩いているとき、あるいはタクシーに乗車しているとき、涼しい顔をしながら車の横を通り抜けていく、オレンジ色のベストをまとったライダーマンに多数遭遇します。もちろん、行き交うライダーの半数はタンデム走行の2人乗りです。

「危なっかしいなぁ、よくあんなのに乗れるよなぁ」

クルマとクルマの僅かの隙間を縫うようにすり抜けていくバイタクの姿は、まるで曲乗りしているかのようです。乗客は男性のみならず、女性までもが、まるで当たり前のことのように乗車しています。

中にはスカートをはいているためでしょう、横座りする女性も多く、よくあれでバランスが保てるもんだと、見ているこちらが逆にハラハラしてしまうほどです。

バイタクは危険! 事故も多く発生しているので、乗らぬ方が良い(著名ガイドブック)

言葉だけでなく、その走行の実態をおのが目で確かめることで、ガイドブックさんのおっしゃるとおりですとばかりに、バイタクだけには乗るまいと心に誓い、その存在に気を留めることなく無関係を装っていたのでした。

バイタクとタクシーの棲み分けは明確になされている

まず、タイの道路の基本知識として、タノンと呼ばれる大通りと、そこから延びるソイと呼ばれる路地があります。たとえばスクンビット通りですと、北側に向かって延びるソイには1,3,5・・・と奇数の番号が順次付与され、南側に向かって延びるソイには2,4,6・・・と偶数の番号が順次付与されています。

「あー、家まで歩きたくない」

暑い中を歩くのが嫌いなタイ人に向けて発達を遂げたバイタクは、 主にソイの中の比較的短距離を行き来するための乗り物です。大抵のソイの入り口では、日陰で涼みながら客待ちする、真っ黒に日焼けしたオレンジ色のベストを着けたライダーマンが客待ちしております。

「タクシー! タクシー!」とクルマを停車させて客引きしているタクシーは、ほとんどが雲助の悪徳運転手ですから相手にしてはなりません。流しのそれを捉まえるのが正解ですが、バイタクの場合、基本的に流しのバイタクというものがなく、たまり場で客待ちしているバイタクに乗車する必要があります。

なぜなら、バイタクはソイの中を行き来するのが原則である以上、それぞれの「縄張り」「根城」を持っていて、この持ち場を出て行ってまで客を捉まえることはしないのです。

通りかかった空車のバイタクに「乗せてって」と頼んでも、「あっちにあるたまり場に行け」と断られたことが何度かありました。

乗客の目的地がたまたま他人のシマの中であったとしても縄張りを犯すことにはならないが、自分の縄張りに戻る途中でお客を拾うことは他人のシマで商売することに当たり、それはできない仁義があるようです。

バイタクは、タクシーがする比較的長距離の客を捉まえるというコンセプトとは相反しており、したがって、バイタクとタクシーとの間には、棲み分けが完全になされているといってよいでしょう。

ソイの入り口に掲示されていたライダーマンたち。でも、こんなにたくさんのライダーマンたちが常に待機している訳ではなく、実際は多くても10人くらいです。

写真指名もできません。ただ、乗車する側としても、このように顔と名前を公開してグッドライダー宣言してくれていると、多少は安心感もアップできますね。

「乗ってくか?」バイタクの運ちゃんからの鋭い視線の問いかけに、思わず目をそらし続けていた日々

「絶対に乗るもんか」と思っていた初期の頃でしたが、ソイの中を汗だくになって歩いている私の横を次々とピストン輸送されていく地元民たち。その姿は、嫌でも私の目に飛び込んできます。時間が経つにつれて、「私もいつかバイタクに乗ってみたい」そんな気落ちが芽生え始めていました。

大通りからソイに入るとき、しばしば次のようなことがありました。すなわち、バイタクに心を奪われつつあった私ですので、彼らをそっと盗み見していたのですが、この気配を感じた運ちゃんが、私に鋭い視線を合わせ、

「乗ってくか?」

と人差し指を立てるしぐさで問いかけてきます。狼狽した私はサッと目をそらし、そそくさと運ちゃんの前を通り過ぎて行きます。初恋をした思春期の男のように強がって、バイタクに気があるのにないそぶりを見せていたのでした。

初めてのバイタクはホテルから駅までの3分間だった

そのとき、私はプロンポン駅のあるスクンビット通りまで徒歩20分近くの距離にある、デイビスホテルに投宿しておりました。ホテルのサービスにあるトゥクトゥクも利用できる時間でなく「仕方ないな」と、いつものように徒歩で向かう選択をしかけました。

ところが、なぜかチャレンジ精神が湧いてきます。昼間で視認状況が良好であったことや、比較的道路が空いていたことなどの好条件も手伝い、目の前に待機していたバイタクを利用する決心をしたのでした。これまで何度もライダーマンから受けた

人差し指を立てて、目で合図

することを、逆にこちらからライダーマンへと仕掛けます。これをキャッチしたライダーマンは、無言で発車の準備を整えたのでした。

ブロロロロロロ……ルルルルルル……

後部座席へと腰かけた私を乗せたバイタクは、音を立てて駅へと走り出し、恐怖と爽快感とに包まれた初めての3分間が風と共に去っていったのでした。

さてここからは、私が経験してきたバイタクの利用方法を、ステップ・バイ・ステップでご紹介いたします。

ステップ1 たまり場へ向かう

貴方の目的地があるソイの入り口には、必ずと言ってよいほどオレンジ色のベストを着たライダーマンたちが待機しています。彼らに近づき、指を1本立てる等して合図してみてください。待機しているライダーマンの内の1人が、すぐに出発の準備を整えてくれます。
 

 

ステップ2 行き先を伝える

貴方を運ぶライダーマンに行き先を伝えます。ここでは、「BTS」「MRT」「HOTEL」などの簡単な単語以外は、英語がほとんど伝わらないものと思ってください。たとえば「UNIVERSITY」などは通じない可能性が高いです。

ただし、彼らは持ち場のソイのことなら熟知していますので、それほど問題はないかと思われます。私は難易度が高い目的地の場合には、スマホで地図や画像を予め用意しております。

ステップ3 運ちゃんとバイクとに、自らを一体化して乗車する

ライダーマンが目的地を理解してくれたら、いよいよ後部座席に乗り込みます。地元民の中には、スマホをいじったり、両手でモノを持ったりして座っているだけの上級者も散見されますが、急ハンドル・急ブレーキの場合には、落馬ならぬ落バイクする危険があります。これに備えて、グラブバーを軽く握っておいた方がよいでしょう。

「こんな狭い中を突っ込むの? うわぁぁぁぁぁぁぁ危なーーい!」

と感じるような隙間でも、ライダーマンは平気で突進していきます。彼らもプロですので、どの程度の隙間があればすり抜けられるかの感覚が身についています。なので、確かに恐怖心はありますが、下手に動く方が危険です。走行中は、運ちゃんと車体と自分とを、一体化するように努めてください。

また、すり抜けの最中、膝がクルマにぶつかってしまうかのような恐怖もありますが、ライダーマンの膝より足を拡げていなければ大丈夫です。

ステップ4 運賃は後払い。外国人運賃でボラれたくない場合には、多少の駆け引きが必要

溜まり場には、このように料金表が掲示されているソイもあります。でも、このタイ語をスラスラ読める旅行者はごく少数でしょうし、そうであればタイ語でライダーマンと話を付けられるはずです。ですが、私を含めた大部分の日本人旅行者には解読不能ですから、

「私の目的地までは、一体いくらなのだ?」

という問題点をクリアしなければなりません。 この点について、私の現時点での結論は、次のようなものです。

なお、ここでは「初めて訪れたソイだから運賃相場が分からない」ことを前提に考えます。

乗車時に外国人が運賃を尋ねると、貪欲なライダーマンならば、相場の2倍から3倍程度の外国人価格を提示してきます。この機を狙って、少しでも稼いでやろうとの山師的な対応力が瞬時に現れるのです。数倍でなくても、適正価格に上乗せした運賃を提示してくる確率が、とても高いです。

「たとえ5バーツであろうとも、ぼったくりされるのは御免だ!」

 という意見には私も賛成です。地元民の乗車方法を観察していても、誰も乗車時に運賃を尋ねていません。ただ目的地を告げているだけです。したがって、我々も地元民と同じようにします。すなわち、私はカモでないんだぞという堂々とした態度で接し、運賃後払いとします。
 

「だからよ、その運賃が分からないのが問題なんだろ」

話をもう少しお聞きください。バイタクの運賃も、走行距離が長ければ長いほど高くなるのですが、タクシーのように運賃メーターがついているのではありません。あくまでも目安があるだけです。

700メートル先にあるセブンイレブンなら10バーツだが2番目にあるコンビニまでなら15バーツ、〇〇ホテルまでなら25バーツ、といった具合です。ソイの中を進むだけなら、1キロ程度で15バーツ前後、ソイの最深部まで行っても50バーツあれば足りるでしょう。

そこで、走行した感覚から、たとえば「大体1キロくらい走ったから15バーツくらいかな」と当たりをつけて「いくら?」と訊かずに、こちらから先手を打って20バーツを差し出します。「いくら?」と訊くと、ここでも外国人価格を提示される確率が高いです。で、支払ったら、その場をすぐには立ち去らないこと。

なぜなら、本来の運賃が15バーツだった場合、ライダーマンは「こいつ、ちゃんと相場を知ってやがるぜ」とお釣りを返してくれます。せっかくお釣りを返そうとしているのに、その場を立ち去るそぶりを見せると、「ごっつあんです」となってしまいますし、本来価格を知ることもできません。

逆に、本来価格に足りなかった場合には、「旦那、あと5バーツ足りやせんぜ」と言われますので、そのときには不足分を支払います。こうすることによって、初めて訪れるソイでも本来価格で乗車することができます。

ここでの要点は、「自分から運賃を尋ねないこと」です。

「運賃を尋ねる=相場を知らない⇒だったらボッタクッテやれ」という思考回路を彼らに働かせないようにします。もちろん、この方法を用いても、強い意志でボッタクリを仕掛けてくるライダーマンには通用しませんが、この場合であっても、ケンカは避けるべきです。

その他、バイタク乗車時の注意点

タクシーに比べると、危険度は格段に高まるバイタクですので、できるだけヘルメットを貸してもらいましょう。かつては乗客用のヘルメットを用意していないバイタクも多かったのではないかと思いますが、今では警察の取締りが厳しいと見え、大体のライダーマンが乗客用ヘルメットを持っているはずです。

以前、ライダーマンが急に路肩にバイクを停め、「ポリス、ポリス」と言いながら私にヘルメットを手渡してきました。なるほど前方を見ると、交通巡査が取締りをしていた、ということがありました。

リスクが高い乗り物ですから、海外傷害保険に加入していない場合には、やはり乗車はおススメ出来ません。

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