タイ語を修得中の女子大生と友達になった話(中編)

Pocket

あの日、あの時、あの場所で君に出逢わなかったら・・・。振り返ってみると、ほんのわずかでもそれらがズレていただけで運命の人と出逢うことがなかった、という経験をお持ちの諸先輩方も少なくないものと思われますが、かく言う私も、某日、地下鉄駅構内における偶然のタイミングで中国人留学生と知り合うという幸運に恵まれたのでした。旅先での思わぬ出逢いは、旅の思い出をこの上なくエキサイティングなものにしてくれますが、今回は、その留学生たちと中華料理を食してきたとき等の続編です。

「あれっ? 返事が来ない。こりゃマズイぞ」スッポカシの不安が脳裏をよぎる

昨日の出逢いから一夜明けた日曜日、私は、チャットチャック・ウイークエンドマーケットに来ていた。スクンビット地区からは、スカイトレインでも地下鉄でもアクセスすることのできる世界最大級のマーケットである。広大な敷地の中に縦横無尽に張り巡らされたソイ。ここに店舗が所狭しと軒を連ね、地元タイ人の買い物客はもちろんのこと、世界中から集まってきた観光客たちでごった返しており、ムンムンとした熱気が充満している。

巨大迷路と化した市場に一歩足を踏み入れると、もはや、自分がどこにいるのか分からなくなってしまうのが常である。迷いに迷って歩き疲れても、適度な間隔でマッサージ店が存在しており、体力回復を図ることが可能だ。私はむしろ、迷った自分を楽しみながらも新たな店舗を発見することが、最近のマイブームとなっている。

さて、昨夜の約束によれば、チップスちゃんは今頃、宿題と格闘中のはずである。順調ならば、我々は今夜、楽しい宴の席で杯を交わすはずでもある。約束の夜まで、暇つぶしを兼ねた私は、この巨大な市場に来ていた。「宿題をやっつける」この厳しい条件がクリアされた場合にのみ、私はチップスちゃんと再会することができるのである。頑張って宿題を終わらせてくれよ、と願うような気持であった。

お昼過ぎ、ジャブ気味に送信してみた「おはよう」の偵察ラインにチップスちゃんは何の反応もなく、未読のままであった。何やら嫌な予感がする。経験則上、このようなケースにおいては、魚群リーチ並みの高確率でスッポカシという悲しい結末が待ち構えている。

またかよ……。これでダメなら帰ろう……

西日が市場を照らし始めた頃、諦め半分期待半分、私は再びチップスちゃんにラインを送ってみた。黒い画面のまま、虚しくも無反応のスマートフォン。だが、20分ほど経過した頃、画面にメッセージ受信を告げるポップアップが現れた。

「まだ宿題が終わらないの」

聞けば、昼過ぎまで爆睡の後、ようやく宿題の迎撃態勢に入ったのだという。何を今更のんきなことを! だが、短気をおこしてしまっては自滅の元だ。ここは冷静かつしたたかな外交戦術を用いねばならない。昨夜同様、私は硬軟織り交ぜ、チップスちゃんと丁々発止のやり取りを続けた。するとその甲斐あってか、遂にチップスちゃんから

「カワイイ友達も2人、連れて行くわ」

と満額回答を引き出すことに大成功。外交活動は、この上ない結果をもたらしたのであった。

祝・開宴決定! 堅いガードをこじ開け、具体的なアポを取る

2日間かけ、ようやく手に入れたアポ。それは、3人の大学生との友情が始まる宴であった。待ち合わせの時間と場所も確定した。私はウキウキする気持ちを存分に味わいつつ、暮れなずむチャトチャック市場を後にした。

待ち合わせポイントに少し早めに到着し、彼女たちを待つ。待ち人が現れる時間が近づくにつれて心臓の鼓動も高鳴ってくる。この瞬間がたまらない。そして約束した時刻の直前、チップスちゃんから「もう少しで着くわ」とラインが入ったのだ。その後も立て続けに、

「今、改札口の辺りにいるわ」

「これから◯番出口の階段を上るわ。あと少しよ」

と実況中継が入電された。ドキドキ感が、否が応にも高まろうというものである。うむ、中年男子の心理をよく分かっていなさる。チップスちゃんは、なかなかの演出家であった。階段を上る足音が近づいてくる。そして遂に、チップスちゃんとその友達の計3人と、メデタクご対面と相成った。

「サワディカップ」

「ニーハオ」

「こんばんは」

日タイ中、それぞれの言葉で挨拶を交わすと、次第にお互いの緊張もほぐれていく。「カワイイ友達も連れていくわ」のチップスちゃんの宣伝文句に偽りなし。彼女たちの顔立ちは、中国人やタイ人に見えないばかりか、むしろ日本人の様であり、それはまるで、伝統ある日本の女子大に通う真面目な文学部生のように見えた。

「こっちよ」

3人に連れられ、ローカルな街の中、中華料理店目指して歩いた。普段は湿気でうっとうしく感じるバンコクの屋外も、どこか爽やかに感じられた。その時の自分の気分次第で、物の感じ方なぞ、どうにでも変わるものである。いやはや、恐るべし女子大生パワーだ。

しばらく歩くと、我々は今夜の会場となるお店に到着したのであった。

次回予告

女子大生3人と日本の中年が1人。ミスマッチな雰囲気を漂わせながらも、我々は楽しい会話と心の交流を交わしていた。楽しい時間は風のように去り、日本へと帰国したその後も、我らの友情は続くのであった。

次回最終回、後編にご期待ください。

スポンサーリンク
レクタングル(大)広告

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク
レクタングル(大)広告