バンコクに出没する悪質アラブ系詐欺師の新手口はこれだ! 体験ルポ

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バンコクに出没する悪質アラブ系詐欺師の新手口はこれだ! 体験ルポ

「こいつ、悪い奴でっせー」

【緊急ルポ! 日本人の親切心に付け込んだ、悪質アラブ系詐欺師に遭遇! その新たに仕組まれた詐欺の手口をここに告発し、日本人旅行者に注意喚起を促すものである】

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これまで、アラブ系による詐欺といえば、「日本円見せてください詐欺」がよく知られているところであり、私も実際にプロンポンのコンビニで詐欺師に遭遇したことがある。

だが、その手はもはや通用しないと奴は考えたのであろう、より手の込んだ詐欺を仕掛けてきたのである。

今回、詐欺師の標的となった私は、これに逃げることなく正面から体当たりし、真相の追及に当たってみた。

「日本人はカモだ」

かように日本人を愚弄されてばかりでは黙っていられない。奴の手口、詐欺で用いられたアイテム、その後の当方による独自捜査、警察当局との連携など、以下に詳しく報告する。

事件の端緒は、某日、スクンビット地区エカマイ路上において、背後から声を掛けられたことに始まる

その日、私はエカマイ駅に直結しているショッピングモール、ゲートウェイエカマイにて、両替を終えたばかりであった。

▲エカマイ駅直結のモール。馴染みの深い日本食レストランも多く出店している

ホテルのチェックインが完了していなかったことから、食事も摂らずにモールを退店。早くチェックインを済ませようとスクンビット通りを歩いていたのである。その時、突然背後から、

アラブ系

「チョット マテ クダサイ。アナタ、ニホンジン デスカ?」

と片言の日本語交じりで声を掛けられたのだ。振り向くと、そこにはアラブ系、20代後半と思しき細身の男が立っていたのである。

出たな 詐欺野郎!

アラブ系が日本人に声掛けする。それで私はピーンと来た。さては、以前に経験済みの「現金見せてください詐欺」だなと予想した。ところが意外にも、これに反してアラブ系は、私にグーグルマップを見せてくれないかと続けるのである。ん、どういうことだ? アラブ系が言うには、

アラブ系

「私はシンガポール航空のパイロットだが、初めてのタイで誰も助けてくれず困っている」

「搭乗予定があり、スワンナプーム空港まで行かねばならないのだが、行き方も分からず、現金の持ち合わせもないのに、どういう訳だが、ATMが利用できない」

そこで、ここから空港までのタクシー代はいくらくらいか? そして、その額を貸して欲しい、こう言うのだ。「貴様と俺とは同期の桜」でも何でもなく、たった今、ここで「遭った」ばかりであるし、そもそもどうやって返してくれるというのか。

よって、私は断りを入れた。するとアラブ系は、やおらジャケットの胸ポケットからネックストラップのついたIDカードを私に示したのである。それは、顔写真付きの

シンガポール航空 スタッフIDカード

なのであった。

99%詐欺臭いが、IDカードと小道具で、私を信用させにかかってきた

示されたカードは、顧客満足度が極めて高い航空会社として名高いシンガポール航空の社員としての証であった。しかも、パイロットである。これが本当なら、助けてやりたいとも思う。この私の心情を察してか、

アラブ系

ワタシ、オーサカ スンデマシタ。ニホンジン、ミナ、ヤサシイ」

と巧みに揺さぶりをかけてきたのである。日本人のアイデンティティをくすぐるこの言葉に、正直、気持ちが揺らいでしまった。

さらに追い打ちをかけるかのように、アラブ系は、コックピット内でポーズを決める写真をも提示してきたのである。「私は本物のパイロットですよ。シンジテクダサイ」の波状攻撃である。

それだけではなかった。私が、このアラブ系を1%信じてしまったことの大きな理由の1つに、襟元につけていた徽章がある。たとえば国会議員なら、菊をかたどった金色のバッジを付け、その身分をどうだとばかりに誇示しているが、ここでアラブ系は、飛行機をかたどった金色のバッジを付けていたのであった。

私は以前、航空関係者がこれと同じバッジを付けていたのを記憶していたのだが、結果的に、それが災いした格好となった。

こいつが詐欺師だ! 悪質アラブ系チーターの顔を公開する

それでも私が貸し渋っていると、「どうしてシンジテくれないの!? Oh 神様ナゼデスカ!」とばかりに両手を拡げて頭を抱えるオーバーアクションで応じてきた。

ウーム・・・

そこで私は考えた。アラブ系が貸してくれと言う額は300バーツ(約1,000円)である。アラブ系が本当にパイロットであれば、もちろん人助けになるし、仮に詐欺であったとしても被害は小さく、日本人を狙った新手の詐欺として、事の真相を確かめることができる。

「ヤダね。貸さないッ」 または 「OK」

アラブ系を相手にせず、このまま立ち去る事とお金を貸す事とを天秤に計った結果、私は貸して真相を究明する選択肢を選んだのであった。異国の者から日本人が助けを乞われている、これを放っておかりょうか。そう、わずかに残る期待にも賭けてみたのである。

さて、アラブ系は、私を信用させるためにIDカードを提示してきたのだが、これを撮影してよいと盛んに言ってきた。また、LINEの交換もして、連絡を密に取るとも約束した。そして、その問題のIDカードというのが、これである。

▲偽造IDカード。プラスチック製であり、一目で偽物と見破るのは難しい

今後、遭遇するときに備え、よく憶えておいていただきたい。

お金を貸すその場面を撮影せず、さらには尾行を怠り、ホテルに戻るという痛恨のミスを犯してしまう

さて前述したとおり、私は以前スクンビットのコンビニ内で、カップルを装ったアラブ系詐欺師の「日本円見せて詐欺」に遭ったことから、以後、かような手合いにぶつかった場合には、これを動画撮影し、一部始終を記録しようとシミュレーションしていた。

初めて赴く外国の地について、大きな関心事といえば治安であろう。特に旅慣れていない、タイひとり旅初心者ならば、その比重も大きいはず。そこで、こ...

 

ところが、現実にその決定的場面にぶつかったというのに、これを完全に忘れてしまったのである。なんたる不覚!

さらには、お金を貸し与えた後、アラブ系を尾行し、どのような行動を採るのか調べておくべきだったのに、ホテルのチェックインを優先してしまったことである。

今考えても、本当に迂闊であった。情けない限りである。

先ほど、99%詐欺臭いと感じたと述べたが、実は詐欺師とのやり取りの中で、彼奴の重大な矛盾点に気付いていたので、絶対にそうしておくべきだったのである。

そのアラブ系の矛盾点とは、

①初めてのバンコクであるはずなのに、どうやってお前は空港から遠く離れたエカマイに来て、1人でいるのだ?

②初めてのバンコクであるはずなのに、なぜお前はタイの携帯電話番号で登録したLINEを持っているのだ?(私のスマホ上で彼奴が自分のID検索をしたとき、タイの携帯番号を入力していた)

IDカードを撮ったからと安心してしまったのがマヌケであった。唯一、撮ったのが次の写真である。

▲写真中央の男が詐欺師。パイロットに化けるときはスーツで出勤。小道具にも注意

写真中央に見える、白いシャツの男がホシである。ご覧のとおり、相手を信用させるため、キチンとした身なりである。そして体型は、すらっとしている。

「ありがとうブラザー。おかげで空港に到着しました」

ホテルに到着し、つい先ほど起きた出来事を思い返していた。ちっくしょう、ドジふんじゃったなぁと考えていると、1時間ほど経った頃、アラブ系からLINEで連絡が入ってきた。

アラブ系

「ありがとうブラザー。おかげで空港に到着しました」

「貴方には、お礼として航空運賃を3割引きしてあげます」

このようなモットモらしいことを言ってきた。私はこの時、ちゃんと金返せよとは言わずに、

「さっき見せてくれたコックピット内の写真を送って! とってもクールなんだもの」

と申し出た。なぜなら、お金のことを言うとそれっきりになりそうであったし、コックピット内の写真を送らせれば、何らかの手掛かりが掴めると考えたからである。するとアラブ系は、

アラブ系

「Later」

こう言ったきり、その日の通信が途絶えてしまった。

24時間待ったが連絡なし。アラブ系に督促してみる

「後で写真を送るー」そう言ったまま音沙汰のないアラブ系。待てど暮らせどコックピット内の写真を送信してこないのだ。これはマズイ流れである。あれから24時間が経過したので、督促文書を送信してみた。すると、アラブ系から返信が来たことは来た。それは、口から出まかせであることが濃厚すぎる言い訳なのであった。

アラブ系

「ハロー! ブラザー。私は今、シンガポールに戻りました」

「でも、私の銀行口座には、いくつかの問題が生じています」

「お金を返金しますから、あなたの口座番号を教えてください」

この時点で、アラブ系に対する信頼度は1ミクロンから1ナノへと減った。私はアラブ系と連絡が途絶えることを恐れ、直接的なお金を返せよりも、やはり再度コックピット内の写真を送信するように返答した。

が、この私のメッセージをもって、アラブ系は私の連絡を「未読スルー」して逃げ切りを図ってきたのである。私は遅まきながら、怒りの炎が燃え上がった。

詐欺の逃げ得、許すまじ

私は真相究明のため一人、特別捜査本部を立ち上げ、特命係長を拝命した。

寸借詐欺を確信し、事件として認知。特命係長、独自捜査を開始する

今回の訪タイでは、特段のイベントやスケジュールがなかったことも手伝って、この事件に割くための時間は十分にあった。よって、私はまず、事件現場となったゲートウェイエカマイに向かい、張り込みと聞き込みを開始することにした。この近辺を根城としてターゲットとなる日本人を待ち構え、詐欺働きしている確率が高いと考えたからである。

出入口付近にケンタッキーがある。ここで私はチキンバーガーのセットをオーダーし、腹ごしらえしつつホシが現れるのを待った。それにしても、タイのチキンはピリ辛が効いていて、刺激的な味わいである。また、セットのドリンクにウーロン茶などのお茶系がなく、どれも炭酸飲料ばかりなので、ヒリヒリした舌を癒そうとドリンクを口にしても逆効果となってしまう。

さて、張り込み開始から、おおむね1時間が経過したが、ホシは現れなかった。そこで私は、出入口で警備に当たっている警備員や駅直結のモール軒下に出店中の屋台店主に聞き込みを行った。彼らが行き交う人々を定点観測している分、ホシを目撃している確率が高いと考えたからである。

残念ながら有力情報は得られなかったのではあるが、しかし聞き込みをしたある露天商は英語も流暢であり、事情を話したところ、

露天商

「それはヒドイ話ね。その詐欺師を見かけたら、すぐにあなたに連絡するわ」

と、協力を申し出てくれたのである。アラブ系も、まさか現地人の監視の目があるとは思うまい。網にかかるのをじっくり待つこととしよう。

その夜、ソイカウボーイにて、一人ヤケ酒をあおっていたところ……

エカマイでの張り込みと聞き込みが空振りに終わり、また、タイの知人に警察関係者の友達はいないかと尋ねるも、いずれも答えはノーであった。どうしてそんなことを尋ねるのかと訊いてきた知人に今回の一件を話したところ、

知人A

「えっ?お金を貸したの? (呆れて)あなた、いい勉強になったわね」

知人B

「そんな奴の言うことなんか信じちゃいけない」

知人C

「自分の身は自分で守らなきゃダメ」

異口同音にして、私に厳しい言葉が浴びせられた。全くおっしゃるとおりである。そして彼らはまた、300バーツは少額だから諦めろとも言った。

しかし、被害金額の大小は問題ではないのだ。身分を偽り、日本人の親切心に付け込んだ悪質な詐欺をそのままにしてはおけないのである。私は何か妙案はないものかと、夜もとっぷり更けたアソークの街をさまよっていた。目の前には、ソイカウボーイのネオンが妖しい光を放っていた。

▲男性客だけでなく、女性客の姿も少なくない。夜のバンコクを代表する盛り場でもある

ソイカウボーイはゴーゴーバーでその名を馳せてはいるが、店内でダンサーを見ながら酒を飲むだけでなく、店外に設置された大型テレビで放映中のスポーツを楽しむこともできる。そこならダンサーが横に座って「コーラー奢って」攻撃をしてくることもないので、うざうざしくない。私はテレビの真正面の席に陣取り、ビアシンで喉を潤していた。しかしその夜は、いつもと違う違和感を感じていたのである。

なぜなら、ソイカウボーイ両側の入口付近には、相当数の警察関係者がいて、多少なりとも物々しさが感じられたからである。とはいえ、どこかの店に手入れをする訳でもないようで、店は至って通常営業を続けていたのだ。

特命係長

「どうして大勢のポリスがいるの?」

ウエイトレス

「見回りに来ているのよ。今夜がその日みたいね」

どうやら軍事政権下における風紀取締り政策の一環のようであり、警察当局が観光客の安全を確保し、各店舗に不正行為をするんじゃないぞと睨みを利かせていたのである。

ん・・・、待てよ。これはまたとない機会かもしれないぞ

私はその時、あることを思いついたのであった。

強力な味方との邂逅。イミグレーションポリス・オフィサーとLINEで連絡先を交換してもらう

私が多数のポリス達の姿を見て、思いついた妙案とはこれである。

ポリスと知り合いになって、事件を相談してみてはどうだろうか

一般的にタイで犯罪被害に遭ったときは、ツーリストポリス・ステーションまで出向き、書類を作成して被害を申告することになろう。ところが、今回のように被害額が小さい場合、事件として捜査してもらえない可能性が高いと思われる。しかも、大勢いる内の一旅行者としての扱いでしかないだろう。

だが、知り合いが被害に遭ったとあれば、犯罪捜査に着手してくれる確率が高まるはずである。そこで私は、まず警察官に記念写真を一緒に撮ってもらっても良いかと尋ね、イケル雰囲気があったなら、そのまま事件相談を行おうと考えたのである。これならポリス・ステーションまで行って書類を書く手間も省け、合理的である。

さてここで、その日のソイカウボーイには、3種類のポリスの姿が確認できたので、私はそれぞれのポリスに声を掛けてみることにした。だがこれは、めちゃめちゃ緊張させられた。

なぜなら、どの捜査官も鋭い眼光と威圧感があり、下手なことを申し出て私自身が職務質問されるのではないかと不安に思われたからだ。声を掛ける時には、本当に勇気を振り絞って第一声を上げる必要があったのだ。

では早速、その捜査官たちをご紹介しよう。

この捜査官は、所轄警察署の刑事さん。ムエタイの心得でもあるのだろうか、どこか格闘家の雰囲気がある。腕っぷしが強そうなことが素人目にも分かり、絶対に敵に回したくない。物凄く怖かったが、「いいよ」と撮影に応じてくれた。

▲険しい表情で夜の街を監視するその目は、威圧感たっぷりであった

ウエイトレスによれば、この軍服っぽい制服を着用しているのがインターナショナルなポリスであるとのこと。こちらの方たちに声掛けするのも当然ながら恐る恐るであった。だが、意外にもポーズまで取ってくれ、イイ人であった。

▲軍服っぽい制服は、やはり威圧感を増加させる

そしてこちらの捜査官が今回、私と連絡先を交換してくれたイミグレーションポリスである。勝野洋にチョッピリ似ていたので、この捜査官氏のことを仮に「テキサス」と呼ぶことにする。この時も、私はビビりながら声を掛けてみた。

するとこのテキサス氏からは「イケルかも」という空気を感じたので、写真を撮ってもらった後、詐欺事件のことを思い切って相談してみたのである。

イミグレーションポリスであれば、不法入国者、オーバーステイに係る事件が主である。今回の被疑者であるアラブ系も、その疑いが強いから、したがって、今夜出会った三種類のポリスの中でも、狙う獲物がピタリ一致している捜査官であると言えた。

▲テキサス捜査官。私と氏とは、いつでもホットラインで繋がることができる

テキサス氏に事件の詳細を説明し、ホシとやり取りしたLINEの送受信履歴を見せると、隣にいた若手捜査官氏(ここでは仮に「スニーカー」と呼ぶ)が

スニーカー

「こりゃチーター(詐欺師)だね」

と捜査官としての直感で断定すると、テキサス氏は優しい口調で、

テキサス

じゃあ、ホシの連絡先を送ってくれますか」

ホシのLINEにおける連絡先を共有してくれることになったのだが、当然その前提として、私と捜査官氏との間で、LINEの連絡先の交換がメデタクなされたのであった。

テキサス

「もし、ホシとやり取りがあれば、画面を送信してください」

何とも力強く、有難いお言葉である。私は心から感謝の言葉を述べ、テキサス氏と固い握手を交わしてホテルへと戻ったのであるが、その足取りは非常に軽やかであった。

「こいつなら知ってるよ」警備員の証言に悶絶するも、その情報の結末とは

翌日、例によって疲労のため、正午近くまで惰眠をむさぼっていた。寝ぼけ眼でスマホをいじると、なんと昨日情報提供をお願いしていたゲートウェイエカマイの露天商から、

露天商

「さっき、詐欺師に似たアラブ系の男を見たわよ。エカマイ駅から私の前を通ってエスカレーターを下って行ったわ」

とのタレコミがもたらされていたのである。やはり日本人を物色するためにエカマイに現れおったか、この詐欺師めが! 私は事情を聴くため、その露天商の元へと急行した。

彼女の話では、写真によく似た男が、今日はTシャツ姿の手ぶらで歩いて行ったとのこと。そうすると、今日は「シゴト」に取り掛かる日ではなく、その他の目的で現れたのであろうか。それとも、偽装用コスプレ一式をこの近くのアジトに保管してあって、着替える前だったのだろうか。

いずれにしろ、エカマイが犯罪の拠点であることに間違いはなさそうである。私は更なる情報を収集するため、出入口で立哨している昨日とは異なる警備員にも話を聞いてみることにした。すると、驚愕の事実をこの警備員は証言したのである。

警備員

「ああ、知ってるよ。この男なら、2フロアにいるよ」

特命係長

「なんだって! 間違いないね?」

なんと、ホシは大胆不敵にも、このゲートウェイエカマイで働いているというのだ。警備員に間違いないのかと念押しすると、「2倍! 2倍!」とVサインを作った高見山大五郎のように、何度も2フロアにいるよと指で応答したのである。

ここの2フロアにホシがいる

体に電流が走るのを感じながら、私はエスカレーターを駆け上った。待っていろ、詐欺師野郎! 首根っこを捕まえて、テキサス氏に引致してやるからな。

▲航空ファンなら一度は体験したい本格シミュレーターを備えている。ただし、安くはない

2フロアでエスカレーターを降りた先には、本格的な操縦体験ができるフライトシミュレーターを備えた店、「フライト エクスペリエンス」がある。私は昨日、航空関係ということで、ここのスタッフにも聞き込みをしていた。

対応してくれた彼は、正真正銘、正規の課程を修了したパイロットの卵であるという。たった今、下にいる警備員から聞いたばかりの情報をこのスタッフに話したところ、

フライトスタッフ

「それなら、私も一緒に探してあげるよ」

と仕事中にも拘わらず、詐欺師を探すために席を立ってくれたのである。こういうところがタイ人の良いところである。「さぁ詐欺師を追い詰めたぞ、袋のネズミだぞ」そう思いながら2人して歩き始めた時、このスタッフが、

フライトスタッフ

「ちょっと待って! 下にいる警備員が2フロアにいるって言ったんだよね? もしかして、私たちのことと誤解しているんじゃないのかな?」

でたー。野球中継で、解説者が選手を褒めた途端に当該選手が三振したりホームランを打たれたりするケースがあるが、ここでもタイ人を褒めたすぐ後で苦言を呈さなくてはならない。警備員は、フライト エクスペリエンスのスタッフが航空関係の制服を着用しているから、それだけを根拠にしてIDカードの男が2フロアにいると回答していたのだ。何たるいい加減さであろうか!

それでも念のためと、このスタッフは2フロアを一緒に巡回し、持ち場の警備員に尋ねてくれたのだが、アラブ系の警備員は働いていないということであった。

そして彼に、改めてこのIDカードを見てもらった。彼によれば、偽造カードかどうかは断定できなくとも、まず間違いなく偽パイロットだという。

なぜなら、本物のパイロットであれば、必ずネクタイを着用しているはずだが、この男はノーネクタイのクールビズ仕様だからというのである。なるほど、関係者だけに着眼点はさすがである。

▲本物のパイロットがネクタイを着用していることを知らずにポカをしたアラブ系

私は、ホシが私に提示したコックピット内の写真を、このフライト エクスペリエンスで撮影したのではないかと推理したのだが、彼は憶えていないという。

また、ここの体験料金は、30分約4,500バーツ(約1万5,000円)だというので、かなりの料金がかかる。タイ国内でフライトシミュレーターは他に1か所だけであり、それは一般人が常時利用できないタイ・エアウェイズにあるとのことなので、やはり偽装写真を撮ろうと思ったら、タイ国内ではエカマイのこの店で撮っていることになる。

寸借詐欺のため、それなりのコストをかけて準備したのか。それとも、パソコンソフトを使っての合成写真だったのか。どちらにしても手が込んでいて悪質である。私は次のステップとして、偽造IDカードを捜査してみることにした。なぜなら私には、心当たりがあったからである。

捜査は足で行うもの。偽IDカードの製造元を突き止める!

もはや説明するまでもないとは思うが、バンコクにはバックパッカーの聖地と呼ばれたカオサンロードがある。今では安宿街というよりも、お洒落な飲み屋が立ち並び、欧米人の姿も数多く見かけることができる一大観光スポットである。
 

▲ご存知カオサンロード。最近、日中に屋台を出店することが政府によって規制されたようだ。屋台店主にとっては商売あがったりである

▲屋台が姿を消した日中のカオサン。道路は広くなったが、活気が失われてしまった

そこでは昼夜を問わず、人の流れが絶えることがないのであるが、人の集まるところ、違法な物品が取引される裏の顔を併せ持つ場所であるともいえる。

私はカオサンに訪れると、人の行き来を眺めながらの足マッサージと屋台のパッタイを食べることをヘビーローテーションで行っているのだが、以前、カオサンの一角に偽造IDを作る店があったことを思い出したのだ。

そこで私は、夕方のラッシュの中、何台もの乗車拒否にあいつつもタクシーでカオサンへと向かったのであった。

はじめに バンコクには、スカイトレインと地下鉄が都内中心部を走行しており、名物の渋滞に巻き込まれることなく移動することができる。しかしなが...

 

道の両側には、ズラッと屋台が並んでいる。私は、その中のある店主と友達になっていたので、偽造IDショップの情報を得るため彼の店へと急いだ。かつては堂々と看板を掲げて数店舗が営業していた偽造IDショップも、今はまったく見当たらない。これも現政権による取締りが厳しくなったためであろう。到着した店主に今回の事情を説明し、偽造IDショップの所在を尋ねた。

店主

「おい、フェイクIDのとこに連れて行ってやってくれ」

と、店主がアルバイトの男に命ずると、アルバイト店員は「こっちについて来な」とばかりにアゴをしゃくり、私をカオサンロードから路地を入って進んだ行った、ある建物の前まで案内してくれた。

一見すると、タイによくある開放的な民家の様でもあるが、アルバイトが合図をすると、中から心得た男が出てきて、

闇の店主

「旦那、フェイクIDかい? 色々あるぜ」

と小脇にファイルを抱えて現れた。私は見学だけさせてくれと一言断りを入れたうえで、

特命係長

「この男、知っている?」

とホシの偽造IDの画像を見せて尋ねると、何となんとナント、

闇の店主

「ああ、知ってるぜ。だって、このIDは俺が作ったのだから」

特命係長

「!!」

私の推理はズバリ的中した。やはりホシは、カオサンで偽造IDを製造していたのであった。闇の店主によれば、1枚1,500バーツ(約5,000円)でプラスチック製のそれを速やかに作成してくれるとのこと。ファイルの中には、確かにシンガポール航空の偽造IDカードもラインナップされていた。

特命係長

「ユニフォームも貸してもらえるの?」

闇の店主

「そこまでは用意していない」

闇の店主の話が、ゲートウェイエカマイの警備員と違って確かなものであるとするならば、ホシはわざわざパイロットの制服を入手してまで、偽造IDを作成していたことになる。ネクタイ着用を怠るなど抜けているところもあるが、実に用意周到である。ここまで手間暇かけたとなると、なりすましによって日本人から騙し取る金の目標総額も、高く設定しているはずだ。

ゲートウェイエカマイのカスタマーサービスにシンガポール航空の事務所、いずれも犯罪捜査には非協力的で、残念

さて、私たちが犯罪被害に遭うなどトラブルに見舞われた場合、捜査機関の他に頼りにすべきは企業のカスタマーサービスである。

今回、私はゲートウェイエカマイのすぐ近くの路上で被害に遭ったことから、数多く備え付けられている防犯カメラにホシの姿が捉えられていることは間違いない。そこで私は、カスタマーサービスに事情を説明し、ビデオ映像を見せてもらえないかと依頼したところ、

カスタマーサービス

「私も詐欺被害については重大な問題だと考えています。でも、令状がない以上はお見せ出来ません」

とても日本的と言うか杓子定規な回答で、にべもなかったのである。ひと昔のタイならば、それは災難だったわネと見せてくれたのではないかと思われるが、時代の流れとはいえ、随分と世知辛い世の中になったもんですな。

▲カスタマーサービス。もちろん、そのときの担当によって当たりハズレはある

さらに、私からの、ホシの顔写真をゲートウェイエカマイに送信したいとの申し出にも、

カスタマーサービス

「受けられません。だって、写真をもらったところで、貴方は日本に帰ってしまうのでしょう」

と、こちらもダメだの一点張りであった。私が申し出た趣旨は、「詐欺師がここを拠点としているので、次の被害者を出さないためにも情報を共有した方が良いのではないですか。そちらとしても、要注意人物としてマークできるのではないですか」というものだったのであるが、結局耳を貸してもらうことができなかった。

そして、ゲートウェイエカマイのカスタマーサービス以上に塩対応だったのが、シンガポール航空の事務所であった。ホシの情報を送り、社員か否かを問い合わせたところ、唯一、ニセ社員であることだけは教えてくれたのであるが、その他、隠す必要のないことまでも口をつぐんだのである。

「面倒に巻き込まれたくない、関わりたくない」その一心であったのであろう。曖昧な弁解に私が理詰めで再質問したところ、出ましたお決まりのセリフ

シンガポール航空

「お答えできません。これにて対応を打ち切ります」

マニュアルどおりの宝刀を抜いてきたのであった。確かにシンガポール航空も勝手に名前を騙られているので被害者としての一面はあるのだが、今回の対応は結果として、不作為による犯罪の助長になりはしないだろうか。無関係を決め込むことは、社会的一員たる企業の姿勢としていかがなものであろうか。

雲上のサービスはトップクラスなのかもしれないが、それにアグラをかいた今回の対応は、非常に残念なサポートであった。

本件の小括。そして、皆様からの情報提供をお待ちしています

ここで、本件詐欺事件の概要をおさらいする。

●犯人性

20代後半のアラブ系。身長180センチ前後で細身の体型。スーツ姿。

●使用言語

英語と片言日本語のごちゃ混ぜ。

●なりすましの対象

シンガポール航空のパイロットを詐称。ただし、その他の航空会社のパイロットになりすます可能性も相当にある。

●出没スポット

BTSスカイトレインのエカマイ駅直結である、ゲートウェイエカマイ付近。正午前後に出没する確率が高い。

●偽装工作のため、所持しているアイテム

□偽造IDカード(ネックストラップ付)

□偽造バッジ(飛行機を模した金色の徽章)

□コックピット内でポーズを決めている偽装写真

□スマホ2台(1台がサムソン製、1台がおそらくOPPO製。内どちらかの画面が割れており、待ち受け画面にはガールフレンドと思われる女)

●手口

「グーグルマップを持っていないか?」と声を掛けてくる。その後、迫真の演技で困っている姿をアピール。この時、自身が所持しているのは20バーツ札だけだとチラ見せしてくる。この点、日本円見せて詐欺の手口の流れを汲んでいるため、その残党である蓋然性が高い。

●情報提供のお願い

本件詐欺師に関して、「目撃した」「被害に遭ってしまった」などの情報がございましたら、ぜひ当方までお知らせください。イミグレーションポリスのテキサス氏に、速やかに通報いたします。我々日本人の親切心に付け込む悪質詐欺師の検挙に、ご協力をお願い申し上げます。

本件については、今後も捜査に動きがあり次第、こちらで随時、報告する予定である。

※事件の続報です!

タイで偽パイロットのアラブ系詐欺師がまた現れた。被害状況を速報 本年7月22日付の報告記事で詳細をお伝えしたアラブ系詐欺師について、日...

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コメント

  1. ヨッシー より:

    11月29日木曜日、バンコクトンロー 地区でこの男に遭遇しました!管理者様に詳細レポしたく宜しければ連絡先頂きたく。

    • トラ より:

      ご連絡ありがとうございます。メールを送信させていただきました。
      どうぞよろしくお願いいたします。