狂犬病予防ワクチン体験レポ① タイで動物に咬まれたら直ちに病院へ

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「タイでは野犬に注意せよ。なぜなら狂犬病のおそれがあるー」

狂犬病の怖ろしさは誰もが知るところですが、狂犬病の正しい知識を持っている方、狂犬病の恐怖に直面し実際に予防ワクチンを接種したことのある方は、意外にも少ないことでしょう。

私はバンコク滞在中の不注意により、野良猫に咬みつかれてしまいました。そのため、慌てて狂犬病予防ワクチンを接種した冷や汗ものの体験を得ました。

狂犬病についての正しい知識を備えていれば、いざという時でも冷静に行動できます。

そこで今回は、海外で注意すべき狂犬病をテーマに取り上げて解説すると共に、予防ワクチン接種にまつわる私の実体験をレポートしたいと思います。

狂犬病予防ワクチン体験レポ! タイで動物に咬まれたら直ちに病院へ

「狂犬病」と聞いた時、次のようなことを思い浮かべるのではなかろうか。

☑️ 100% 死んでしまう怖ろしい病気だ

☑️日本では撲滅に成功しており、ここ数十年の間、発見されていない

☑️だが世界では、タイはもちろん、今でも多くの人々が亡くなっている

我々が日本で生活する時、野良犬を見かけることもなければ、駆逐された狂犬病を身近なものとして意識する必要もない。

そのため、タイへ渡航する際、わざわざ狂犬病予防ワクチンを接種してまで万一に備えておくという方は、滅多にないことだろう。

事実、私も他人事として考えていた。

注射が嫌いだし、費用と手間がかかるしで、「狂犬病なんて、なぁーに、大丈夫だよ」という甘い考えを持っていた。

ところが、自分自身が狂犬病の恐怖に直面する当事者となってしまったのである。

「ここに注意!」 狂犬病をざっくり解説

私の体験談を述べる前に、まずは狂犬病についての基礎知識を説明しておきたい。ただ、我々は専門家ではないため高度な知識は不要であるし、そもそも理解することもできないだろう。

そこで、「狂犬病とは、要するにどういうものなのか。何を気を付けたらよいのか」について、一般の旅行者向けに私なりに説明したい。

狂犬病について、知っておくべきこと

① 病原菌を保有するのは犬だけではない。野生動物の多くに注意

この点は、よく知られている事実であろう。もちろん、狂犬病というくらいだから犬が発生原因のメイン動物なのではあるが、ネコ、キツネ、アライグマ、コウモリといった野生動物も病原体を保有しているおそれがある。実際、私は野良猫に咬みつかれてワクチン接種するはめになった。

② 潜伏期間を経て発病すると、致死率は約100%である

これまた有名なポイントであろう。現代医学をもってしても、狂犬病に太刀打ちできないのである。アメリカでは、奇跡的に生還した一例もあるようだが、まず助からないと思った方がよい。発病=死を意味する最恐レベルの病気なのだ。

ただし、たとえ咬みつかれたとしても、迅速な処置を施すことで狂犬病の魔の手から逃れることができる。

なぜなら、狂犬病には潜伏期間があるためだ。この潜伏期間中に予防ワクチンを接種することで抗体を作り、ウイルスに打ち克つことができるのである。

ワクチン接種でいち早くウイルスの殲滅部隊を組織せよ

この点をもう少し詳しく説明する。

たとえば、狂犬病に罹っている犬に足を咬みつかれた場合を考えてみよう。体内に入ったウイルスは、足の末梢神経を通って中枢神経に至り、最終的には脳に到達して、ヒトを死に至らしめる。

いわば、脇道から侵入したウイルス隊が街道を経由して城内へと侵入し、無防備な本丸を攻撃するようなものである。

これを防ぐにはどうべきか?

要は本丸にウイルスが到達する前に、抗体という「狂犬病ウイルスの殲滅部隊」を結成すればよいのである。

この殲滅部隊を結成するまでの猶予時間は、咬まれた部位やウイルス量によって異なってくる。脳という本丸に近接した首を何度も咬まれた場合なら大至急対処しなくてはならないが、脳から遠く離れた足の指先を軽く咬まれた場合なら相対的に猶予が残されていることになる。

よく、「咬まれてから24時間以内に接種せよ」と説くものもあるが、重要なのは、24時間以内かどうかではなく、咬まれた部位や傷の深さ等に応じた処置なのである。言い換えれば、24時間以内に接種できなかったからといって手遅れになる訳でもなければ、23時間59分で接種したから一安心だとも言えない場合もあるということだ。

いずれにしろ、直ちに行動するに越したことはない

これまでの実例から、一般的な潜伏期間は1~2か月だという。長いものでは7年という例もあるそうだが、それを聞くと時間的な猶予が残されていると誤解される方があるかもしれない。

だが、ウイルスは「神経の中に潜伏」しているため、ウイルスがどこまで進軍しているのか現在地を調べる術がないのだという。だから、血液検査をしても無意味である。

つまり、闇夜にまぎれたステルス戦闘機による攻撃のようなものである。

本丸が攻撃を受けて落城した後に、結果として「あぁ、これは狂犬病ウイルスの仕業だったのだな」と分かることも多いのだと言う。

相手が見えざる敵であるならば、ウイルスが今まさに脳へ到達するものと考え、直ちにワクチン接種を行うべきである。

③ 病原体は唾液にあり。だから、爪で引っ掻かれた場合も注意

狂犬病ウイルスは、唾液中に含まれている。だから、咬みつかれた場合だけでなく、引っ掻かれた場合でも同じように注意が必要だ。

たとえば、ネコは自分の体を舐めまわしているが、ネコに引っ掻かれることにより、爪に付着していた病原体が人間の体内に侵入することもあるからだ。

もちろん、愛情表現で皮膚を舐められた場合でも危険だ。今年に入ってからも、助けた子犬に舐められたノルウェー人が狂犬病により亡くなったという衝撃的なニュースがあったばかりである。

④ 自分でできる緊急処置は、水と石鹸で患部を十分に洗い流すこと

不運にも野生動物に咬みつかれてしまった場合、自分でできる最大限の処置をしておくべきである。それは、水と石鹸で患部を十分に洗い流すことである。水道と石鹸がなければ、ペットボトルの水だけでもよいから直ちに唾液を洗い流しておこう。この初動が、今後のあなたの運命を左右すると言っても過言ではない。

なお、出血している場合でも止血はしない方がよいそうだ。

⑤ 狂犬病のない日本ではワクチンは希少であり高価。3~6回の接種が必要だが、保険は適用外

いかに致死率100%である狂犬病といえども、発病前のワクチン接種が極めて有効であることが分かっている。できるだけ、咬まれる前のワクチン接種を済ませておくことが望ましい。

ただ、そうは言っても、狂犬病予防ワクチンは値段が高いのである。健康保険の適用外だから、全額負担しなくてはならないのだ。しかも、抗体を作るには3回の接種が必要であるし、おまけに筋肉に針を刺すので非常に痛い。

こうした理由により、事前の予防接種(これを「暴露前接種」と呼ぶ)を受ける旅行者は、ほとんどいないように思われる。だから、需要の少ないワクチンを常備しているのは、一部の海外渡航者向けクリニックに限られてくる。お近くの医院や病院へ行っても「うちは用意していません」と言われてしまうことだろう。

では、タイではどうか?

タイは、そこら中に野良犬や野良猫がうろついているし、狂犬病で亡くなる方も毎年発生している国でもあるので、ワクチンの在庫は比較的用意されているようだ。日本人旅行者がお世話になるのは、咬みつかれた後に慌てて駆け込む場合がほとんどだろう。

もちろん、値段は安くはない。それに、咬まれた後の接種(これを「暴露後接種」と呼ぶ)は、少なくとも1か月の内に5回必要(※)だから、長期滞在でもなければ、タイで予防接種が完了することはないだろう。

(※ 90日後に6回目の接種を勧められる場合あり)

数日間のタイ旅行なら、さしあたりタイで1本目の注射を打ち、残りを帰国後の日本で受けることになる。今回の私が、まさにこのケースであった。

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以上、知っておきたい大まかな知識をざっくりと説明した。

次に、私が野良猫に咬みつかれてからワクチン接種を完了するまでの体験談をご紹介したい。

【体験談①】 野良猫に咬みつかれてから病院の救急センターに行くまで

泥棒市場で事件は起きた

某月某日、私はバンコクのチャイナタウンにある、通称「泥棒市場」に来ていた。出どころの知れない商品が所狭しと並べられ、冷やかしを兼ねて集まってきた現地人でごった返す人気スポットである。

ここで私は、1匹の小さな野良猫を見つけた。このときは、まさかこのニャンコのおかげで大変な目に遭うなどとは考えてもいなかったのである。

屋台を切り盛りする店主の子供であろうか、この野良猫をナデナデしているのが目に留まった。仮に狂犬病を保有した疑いの高いネコだとしたら、親が瞬時に

「さわっちゃダメッ」

と我が子を護るはずである。しかし、ネコと子の戯れを完全放任している親の姿を見て、安易に考えたのが間違いであった。

「地元民がそうしているなら大丈夫だろう」

危険性がないと誤解した私は、このネコをナデナデして遊ぶことにした。

すると、このネコは私の足をクルクル回って自分の体をこすりつけてきた。どうやら、友達と認めてもらえたようである。かわいいニャンコだと油断したその瞬間、

ガブリ

足首を咬みつかれてしまったのである。甘噛みしたのだろうが、痛みはあった。それと同時に、

「やばい、狂犬病のおそれがある。なんとかせねば……」

その考えが浮かんだ私は水道を探した。だが、チャイナタウンの一角に都合よく水道があるはずもなく、私はペットボトルの水を数本購入して傷口を洗い流したのである。

血は出ていないし、どうやら傷は浅そうだ。

とは言え、ペットボトルの水量では限界があるし、万一ということもある。そこで私は、病院で医師の診断を仰ぐことにしたのであった。

海外旅行に必須。クレジットカードに付帯する傷害保険が大活躍

以前、同じような経験をしたことがあり、今回は迷うことなくバンコクにある傷害保険センターに電話することができた。いざという時、どこに電話すればよいのか知っていると慌てずに済む。

前回に引き続き、実例に基づいた「クレジットカード付帯保険の実力」を探っていきます。 アメックスは頼りにならない。それならセ...

センターの担当者に事情を説明すると、トンローにある「サミティベート病院」を紹介された。この病院なら提携済みであり、キャッシュレスで受診できるのだと言う。しかも、バンコク1、2の医療レベルを誇る私立病院であるから、安心感も大きい。

まるで巨大ホテルのようなサミティベート病院。通訳もいて安心

病院に入ると、そこはまるで巨大なホテルのようであり、日本の病院とは雰囲気が違っていた。カフェなんかも入っていて、悲壮感がないのである。インフォメーションで尋ねると、「向こうで受付を済ませてください」と言われたのだが、広い院内のどこに行けばよいのか分からず、迷子になってしまった。

病院の職員は、右往左往していた私を見つけると、日本語通訳を呼んでくれた。夜間であっても、通訳が待機してくれているのが心強い。私は受付を済ませて「診察券」を作ってもらうと、緊急センターの部署へと導かれたのであった。

待合室で待つこと約10分。健康的な表情をしたナースから、処置室に入り、処置台に横になるようにと指示された。

処置台のベッドを目の当たりにすると、どんな処置をされるのか分からない不安が急激に心を襲い、俄然、緊張感が高まったのであった。

つづく

 「救急センターで、どのような診断と処置を施されたのか?」

 「日本でのワクチン接種とかかった料金はいくらだったのか?」

 「Q&A 医師に狂犬病のギモンを訊いてみた」

などについて、次回②に続きます。

もし発病したら、99.9パーセント助からないー。 現代医学を持ってしても太刀打ちできないという、最恐レベルの病である狂犬病。日本では清...

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